到来3メガバンク時代 バブル後15年の課題
2005年10月02日08時28分
| 「資産トップ10、邦銀が独占」――。バブル経済のピークだった89年には、こんなニュースが流れた。その後、地価下落で巨額の不良債権を抱えた銀行は、経営破綻(はたん)と再編・統合を繰り返し、支店や従業員を大幅に減らした。投入された公的資金は預金保険を含め47兆円。ようやく金融危機を脱し、今春発表した04年度決算の利益は10年ぶりにプラスに転じた。三菱UFJフィナンシャル・グループが1日誕生し、三つに集約されたメガバンクの資産規模は、世界の最上位に君臨する。だが、収益力は国際競争の主役にはまだ遠い。今後どう進むべきか。金融論専攻の池尾和人・慶大教授と、90年代後半から国会で金融再生に取り組んだ塩崎恭久・衆院議員に聞いた。 三菱UFJフィナンシャル・グループの誕生で、従来型の再編は最終段階に入った。次の段階の再編は、外資系金融機関や異業種を含めたものになるだろう。 三菱UFJの目標は、株式時価総額で「世界の金融機関の5位以内」と、外資系との競争を意識している。かつての「大きくなればつぶれない」という消極的な再編と比べれば、次の段階の要素も含まれる。 とはいえ、大企業向けの融資残高は減り続けており、貸し出しを増やすには、中小企業や個人向け取引、海外しかない。国内では過当競争に陥りつつある。銀行の数は減ったが、現在もオーバーバンキング(銀行過剰)の状態は解消されていない。 銀行の貸出残高の国内総生産に対する比率は、85年の水準まで下がったものの、資本市場の発達を考えると、あと50兆~100兆円減ってもおかしくない。メガバンク一つ分の規模の淘汰(とうた)もありうる。
メガバンクは10年前に比べればしたたかで非情になってきており、地銀を駆逐してでも生き残る力はあるだろう。それでも、「古き良き時代」は戻らない。高度成長期の銀行は貴重な資金を配分する特権的な存在だったが、資金余剰のいまは「普通の産業」としての「普通の未来」が待っているだけだ。 証券、保険などを含めた金融コングロマリット(複合企業)化が進んでいるが、総花的になると経営資源の散逸を招く。商品・サービスの一部は他社から仕入れる「製販分離」が重要だ。 総合的な金融サービスに対して、中堅・中小企業の需要は強いので、低コストで一通りの商品をそろえた「手軽でおいしい定食」のようなメニューを用意できれば、成功の余地はある。 日本の金融システム全体への不安が高まり、それを解消するために、我々が金融再生法や金融早期健全化法の成立に取り組んだ98年ごろから比べると、事態が前進したのは事実だ。 不良債権問題には、銀行経営や大蔵省の監督行政、政府・日銀のマクロ経済政策などのさまざまな失敗が凝縮されていた。バブル崩壊後しばらくは、問題の本質がわからなかった。 銀行の資産を市場実勢に合わせて正確に評価しようと、97年ごろから言い続けてきた。そこには、日本の産業の病巣が表れており、不良債権処理と産業再生は表裏一体だった。 (巨額の公的資金を投入した)98年の日本長期信用銀行(現新生銀行)の一時国有化は「高くついた」とよく言われるが、もしもその実態に目をつぶって他行と合併させていたら、ダイエーと同じように1~2年後にはさらにひどいことになっていただろうし、他の銀行の経営も変わらなかっただろう。
現在は、日本経済も銀行も、やっと水面上に頭を出した程度だ。まだ、どっちに向かって飛躍していいのかよくわからない、という状況のように見える。3メガバンクになったとはいえ、巨体をもて余して末端まで神経が回らない存在に終わるかもしれない。筋肉質に変われるのかどうかは、今後の各金融機関の努力次第だ。 銀行同士の再編・統合と同時に、証券などとの複合化も進んできたが、資本市場と向きあいながら、日本経済を引っ張る存在になってほしい。国際的にトップ水準の金融機関を目指すなら、まずアジア市場で存在感を高めることが必要不可欠だ。これまで欠落してきた消費者に対するサービスの充実もきちんとやるべきだ。
■バブル以降の金融業界を巡る主なできごと 85年 9月 プラザ合意。主要5カ国がドル高是正で協調 87年10月 ブラックマンデー。世界的に株が大暴落 89年12月 日経平均株価が史上最高値の3万8915円 91年 6月 4大証券会社の損失補填(ほてん)が発覚 94年10月 定期性預金に続き、普通預金などの金利も自由化 12月 東京協和信用組合と安全信用組合が経営破綻 95年 4月 東京外為市場で円が1ドル=79円75銭の史上最高値 7月 コスモ信用組合が破綻 8月 木津信用組合、兵庫銀行が破綻 96年 4月 東京三菱銀行が発足 6月 住専処理6850億円を盛り込んだ法案が成立 97年 4月 日産生命保険が破綻、生保では戦後初 7月 タイで通貨危機表面化、アジア各国に通貨危機広がる 11月 北海道拓殖銀行、山一証券が破綻。金融不安広がる 98年 3月 大手銀など21行に総額1.8兆円の公的資金注入を決定 4月 金融ビッグバン。外為取引自由化など規制緩和が加速 日銀の独立性を強化した新日銀法が施行 6月 金融監督庁が発足。大蔵省から金融行政を分離 10月 金融再生法、金融早期健全化法が成立、施行 日本長期信用銀行が破綻、一時国有化 12月 日本債券信用銀行が破綻、一時国有化 99年 2月 日本銀行がゼロ金利政策を導入 3月 大手銀など15行に総額7.5兆円の公的資金注入を決定 8月 第一勧業、富士、日本興業の3行が経営統合で合意 10月 住友銀行とさくら銀行が合併で合意 00年 7月 三和銀行と東海銀行、東洋信託銀行が統合で合意 8月 日銀がゼロ金利政策を解除 01年 3月 日銀が量的緩和政策を導入 9月 大和銀行とあさひ銀行が統合で合意 02年 4月 みずほ銀行で発足直後に大規模システム障害 10月 金融庁が「金融再生プログラム」発表。 大手銀に05年3月期までの不良債権比率半減を求める 03年 3月 みずほが1兆円規模の増資 4月 日経平均株価がバブル後最安値の7607円 5月 りそな銀行に公的資金を注入、実質国有化 04年 7月 UFJと三菱東京が統合交渉 10月 ダイエーが産業再生機構に経営支援要請 05年 4月 ペイオフ全面解禁 5月 大手銀が3月期決算発表で不良債権比率の半減目標達成 10月 三菱UFJフィナンシャル・グループが誕生 |


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