Subject:第Ⅰ部 地域経済学
第4章 移出需要モデル、集積と累積的成長プロセス(4.1~4.2)
4.1地域生産物への需要:移出基盤アプローチ
u Heckscher-Ohlin生産要素仮定: Heckscher-Ohlinは生産要素は地域間移動がないと仮定している。そのように仮定しなければ「地域における要素豊富」といったことが無意味になってしまうからである。この非移動の仮定は原材料の場合は成立するが、労働(特に長期において)や資本(これは特に地域間の移動がある)に関しては非現実である。原材料を有利に賦存する地域はそれが相対的に豊富な要素であるために、移出財として原材料を産出することに特化する。このことは自然資源を開発しようとするために資本がこれらの地域に流入することから、地域特化がいったん発生すると、地域生産量Xdに対する外部需要がその成長に支配的な影響を与える。しかしながら、地域の移出成長への外部需要の影響は多くの要因に影響される。それらには、その地域の移出財の価格Px、他の地域の所得水準Z、外部市場における代替財の価格Psである。移出需要関数はこれらの決定要因の影響をまとめて次のように示される。
Xd=f(Px、Z、Ps)
供給側においては生産費用に重要な影響を与える要因はすべて世界市場における地域の競争的位置に影響を与えると思われる。それらは労働費用W、資本費用Pk、原材費用R、中間投入費用Cや技術水準T等である。移出供給関数Xsはこれらの変数の影響を要約して次のように書ける。
Xs=f(Px、W、Pk、R、C、T)
4.2 地域移出と累積的因果関係:地域成長のモデル
地域成長のモデル
第①は生産量の成長yと生産性の成長qの間の関係である。
q=α+λy-1 (4.1)
ここで α=生産性の自律的成長、λ=Verdoorn係数として知られる定数。この関係は一般にバード―アン法則(Verdoorn1949)[2]として引用される。それは生産性の上昇は部分的には1期前の生産量の成長y-1と他の明示されない要素αによって決定されると主張している。生産量の成長が速ければ速いほど、労働生産性の増加も速い。λの数値の重要性は以下で明らかになる。
第②は生産費用のいかなる上昇も直接的にその地域のインフレーション率[3]へとつながる。またいかなる生産性の上昇もインフレーション率を減少させる。
p=w‐q (4.2)
ここで、p=地域の価格インフレーション、w=地域の費用インフレーション。したがって、生産性の成長と費用インフレーションが同じである場合は地域価格の上昇はない。費用インフレーションがモデルの外で決定されるという仮定は費用の上昇は地域要因よりもむしろ国家要因によって決定されるであることから弁護することができる。
第③は移出の成長xは地域の価格インフレーションp及び地域の主要な競争相手のインフレーションpf、世界的な所得成長z(世界的というのは地域の主要な移出市場と解釈される)に依存するということである。
x=‐b0p+b1pf+b2z (4.3)
ここで、b0とb1は需要の価格弾力性、b2は地域の移出への世界需要の所得弾力性である。世界所得の成長が早く、地域の主要な競争相手のインフレーション率との相対で自地域のインフレーション率が低ければ低いほど、地域の移出成長は早い。三つの弾力性の相対的な大きさの重要性は後で論じる。
第④は簡単な移出基盤関係が生産量の成長yと移出成長xを結びつけるために用いられる。
y=γx (4.4)
ここで、γは移出成長への地域生産の成長の感応度である。このモデルの興味深い特徴はVerdoorn関係(4.1)式によってフィートバックのメカニズムを持っていることである。このことは方程式を一括してみることで容易に確認できる。
² これらの方程式間の関連は注意深く考えられなければならない。λ(Verdoorn係数)が正であるとすれば、いかなる生産量成長も地域をより競争的にすることによりいっそうの生産量成長を創造する。一方、これは移出売り上げを増加させ地域生産量をさらに加増させる。システムは累積的であり自己永続的に続く。 (世界所得増による累積的な成長 図4.2 p123)
均衡成長
生産量の均衡成長率は(4.1)式、(4.2)式および(4.3)式を(4.4)式に代入することで得られる。 y=γ[‐b0(w-a-λy-1)+b1pf+b2z (4.5) (4.5)式の項を整理すると、次の式が得られる。 y=γ[‐b0(w-a)+b1pf+b2z]-γb0λy-1 (4.6) または、より簡単に y=α0+α1y-1 (4.7) ここで、 α0=γ[‐b0(w-a)+b1pf+b2z] (4.8) α1=γb0λ (4.9)
長期均衡において成長率は一定となる(y=y-1)。したがって、(4.7)式は次のようになる。
y=α0/1-α1 (4.10)
これはDixon-Thirlwallモデルにおける均衡成長率である。
--à例証:係数:a=2、λ=0.5、b0=b1=b2=γ=1外生変数:pf=3、z=2、w=4 これらの数字を(4.8)、(4.9)式に代入すると、次の式のようになる。 α0=1[‐1(4-2)+1*3+1*2]=3、 α1=1*1*0.5=0.5 (4.10)式から、次の均衡成長率を得る y=3/(1-0.5)=6 となる。y=6を生産性の(4.1)式に代入すると、 q=2+0.5*6=5
これは労働生産における均衡成長率である。最後に生産量の成長率(年6%)から労働生産性の成長率(年5%)を差し引くことによって雇用の成長率(年1%)を得ることができる。(均衡成長率の変化 安定と不安定 図4.3 p126)
勉強になった事
² Heckscher-Ohlin理論
² バード―アン法則
² インフレーション(通貨膨張)
インフレ率(年平均値)の推移(1980~2012年)
出典: IMF - World Economic Outlook Databases(2012年4月版) インフレーション(通貨膨張)